屋根の鎖

本堂や拝殿・本殿の屋根に鎖は垂れ下がっていませんか?
その鎖は、実は「消火設備」の一つです。

寺の近くで火事があったときの延焼を防ぐために、
鎖の下がった場所の屋根に梯子を掛けて登り、
鎖で屋根のてっぺんまで登って屋根に水を撒きます。


高野山真言宗の総本山 金剛峯寺主殿の屋根は、
檜皮葺きとなっており、その屋根の上に天水桶が置かれています。
これは、普段から雨水をためておき、
火災が発生したときに火の粉が飛んで屋根が燃え上がらないように
桶の水をまいてしめらせ、少しでも類焼を食い止める役割を果たします。

【瓦屋根や銅板屋根の場合】

瓦屋根や銅板屋根の場合は、檜皮葺きよりもより防火性能が高いため、
「消化設備」というよりは、屋根修理の時の足がかりとして、
「点検設備」として設けているのです。

寺院の屋根の場合、勾配がきつい(急勾配)のため、命綱を取り付けます。
点検の際の転落防止のためにも設置している寺院が残っています。

また、鎖は取り付けずに、鎖を垂らすための丸環(まるかん)だけを
棟に取り付けている場合もあります。
これも、屋根の点検の時にそこから命綱を垂らすために、
丸環だけ取り付けてあるのです。
また、下記のような観点からも鎖を取り付けない場合が増えてきています。

 

【鎖からのサビ】

瓦屋根の一部が茶色く変色しています。
鉄の鎖が経年劣化でさび付いて、その錆が瓦屋根に付着してしまったのです。

鉄鎖が垂れていた部分だけではなく、
水が流れる方向に添ってこの錆の現象は見られます。
錆が雨水を伝って流れてしまっており、美観を損なってしまっています。

こちらは銅板屋根のサビです。
丸環からのサビが銅板屋根に伝ってしまっています。

 

 

 

このような、錆や重量の観点から、
近年では、鎖を取り付けずに、
棟部分に丸環(まるかん)のみが付いている場合が多く見られます。
実際のところ、屋根の点検の際に、この丸環に命綱を取り付ければ
普段では問題ありません。

檜皮葺きのような、自然素材ですと
万が一の火災の際には、一刻を争いますが、
銅板や瓦屋根ですとより防火性が高まっていますので安心と言えるでしょう。
最近では、この丸環を省略する御寺院様も、増えてきています。